中小企業の特許料等の軽減措置は、3月末でいったん終了になります

1.軽減措置終了のお知らせの概要

平成26年から、国内特許の「審査請求料」、「特許料(1~10年分)」、国際出願の「調査手数料・送付手数料」等が1/3に軽減されておりました。

しかしながら、この軽減は、3月31日でいったん終了になります。 ⇒詳しくは、こちら

 

2.では、3月31日までに審査請求した方がいいのか?

そうすると、「3月31日までに駆け込み審査請求しよう!」と思ってしまいます。

とはいうものの、ここで、ちょっといったん立ち止まりましょう。

 

(1)全ての軽減措置が終了になるのか?

実は、全ての軽減措置が終了になるか? というと、そうではありません。特許法、産業技術力強化法等の他の法律に基づく軽減措置の要件を満たす方であれば、引き続き、「審査請求料」、「特許料(1~10年分)」が1/2となる軽減措置を受けることができます。 ⇒詳しくは、こちら 

また、「2019年度をメドに中小企業の特許料金を半額にする」との報道もあります。

こちらについては、特許庁の産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会 にて検討されており、資料・議事録も公開されております。そのため、軽減制度はいったん終了するものの、いずれは復活することが予想されます。

⇒参考ページ: 報道:2017年11月24日付け日本経済新聞 こちら 

        特許庁:特許制度小委員会の資料・議事録 こちら

 

(2)審査請求のタイミングを、特許庁への費用だけで決めていいの?

確かに、特許を取るとき、特許庁への費用も比較的高額であり、特許庁への費用が3分の1になる、というのは、大きな魅力です。

しかしながら、審査請求は、特許出願した日から3年以内であれば、原則としていつでも行うことができます。審査請求するタイミングの決定は、単に、特許庁への費用だけで決めるものではなく、高度な事業判断を伴うものです。

 

(2.1)早めに審査請求することのメリット/デメリット

<メリット>

早めに審査請求することで、早く特許にすることができ、長い間独占排他権が得られます。また、日本で特許になると、諸外国で特許になる可能性が飛躍的に高くなりますから、無駄な諸外国への特許出願を最小限に抑えることができます。

 <デメリット>

しかしながら、権利範囲が早期に確定してしまうため、特に、権利範囲が狭いと、ライバルに、その権利範囲を巧妙に回避した類似品を開発する機会を与えるリスクも伴います。

また、残念ながら拒絶になってしまったときは、誰でも開発することが可能になります。

(※注:こちらについては、1年6ヶ月以内にその特許出願を取り下げれば、その特許出願は公開されませんので、その出願の内容を秘密にし、社内でのノウハウにする、という手もあります。)

 <どんな人にお勧めなの?>

一般に、このような場合には、早めに審査請求することがお勧めと言われています。

◆ライフサイクルが短い製品であり、特許になるまでに4年、5年もかかっては意味がない場合

◆既に似たような製品が出回っている場合

◆諸外国への特許出願を検討している場合

 

(2.2)期限ギリギリに審査請求することのメリット/デメリット

<メリット>

遅めに審査請求することで、権利範囲が確定するまでの期間を先延ばしできるため、特許明細書に開示された範囲でライバルの開発を牽制することができます。

日本の特に大企業は、コンプライアンスに敏感であるため、ライバル会社の出願中の発明をパクることに躊躇しがちです。そのため、自社製品や自社広告に「特許出願中」の表示を入れることで、一定程度の牽制効果を期待できます。

<デメリット>

特許権の有効期間は、特許出願の日から20年ですので、特許を取得した後の独占排他権を行使できる期間が短くなってしまいます。

また、外国出願をする場合、出願国の選定は、遅くとも優先日から2年6ヶ月以内(言語の翻訳期間を考慮すると、実際にはもっと短いです。)に確定させなければなりません。残念ながら、日本で特許を取得できなかった場合、諸外国でも特許を取得できないリスクが高まりますので、結果として、無駄な出費が増えるリスクを伴います。

<どんな人にお勧めなの?>

一般に、このような場合には、遅めに審査請求することがお勧めと言われています。

◆自社での販売見込みや、ライバル会社が似たような技術を使う等、本当に必要な特許であるかどうかをギリギリまで見極めたい場合

◆権利範囲が確定するまでの期間を先延ばしし、ライバル会社への牽制効果をできるだけ長くしたい場合

◆防衛出願(自分が権利を取得できなくても構わないが、ライバル会社には絶対権利を取得させたくないために申請する特許出願)である場合

(※注:こちらについては、「審査請求しない」というのも一つの選択になります。)

 

(3)審査請求のタイミングについてのまとめ

そうすると、審査請求するタイミングの決定は、特許庁への費用の軽減を受けられるか、だけではなく、クライアント様によって異なる諸々の事情を踏まえて総合的に判断することがお勧めです。

 

3.まとめ

◆中小企業であれば誰でも簡単に3分の2の軽減措置を受けられる制度は、3月末でいったん終了になります。

◆一定の要件を満たしていれば、4月1日以降も、2分の1の軽減措置を受けられます。しかしながら、受けられるかどうかの見極めは、複雑で、素人判断はリスクを伴います。

◆審査請求するタイミングの決定は、特許庁への費用の軽減を受けられるか、だけではなく、クライアント様によって異なる諸々の事情を踏まえて総合的に判断することがお勧めです。

 

⇒以上のとおりですので、とりあえず、特許出願を依頼した弁理士に、「審査請求費用が安くなるのは3月末までって聞いたんだけど?」とお問合せしてみることをお勧めします。